
UXという言葉はだいぶ前からデザインの考え方として流行っています。ただ、本気で学ぼうと思うとどうしても情報は英語になるため、専門用語がネックになりがちです。今回はUXデザインで使われる基本用語を日本語で紹介します。
はじめに
UXとはUser Experienceの略であり、そのWebサービス、アプリ、あるいは、デバイスを使う「ユーザの体験」そのものを指してる言葉です。使い勝手を表すユーザビリティや見た目を表すUI(User Interface)などの言葉と混同されることがありますが、それらを包括した「体験」にフォーカスしてデザインする考え方です。
UXデザインと聞くとデザイナーだけの話だと誤解している人も多いですが、全くそんなことはなく、経営者やエンジニアが考えることで高いビジネス価値を生み出せるものです。デザイナーは単にユーザに最も近い「見た目」を担当しているだけであり、ユーザの体験は見た目だけでは改善されないからです。良い例えと言えば、Amazonのワンクリック購入ボタンがあります。あれはユーザ体験を大幅に改善し、コンバーションも大幅にアップさせましたが、その実現にはボタンを一つにするという見た目だけではなくバックエンドの機能追加が当然行われています。UXデザインの観点で経営者、エンジニア、デザイナーが共通認識を持って働くことが利益を上げる近道と考えることもできるでしょう。
今回はUXデザインの初学者向けに、UXデザインで使われる基本的な用語を紹介します。
基本用語
UXデザインの基本用語を列挙します。一部一般用語も含まれいますが、UXに関係するものは含めています。
User Experience
略語はUX。ユーザが適したプロダクト(Webサービスやアプリ、デバイスなど)を使用した後で感じる、喜び、満足感、欲求不満などの感情。例えば、アプリのインストールやサインインの時の体験や、ファーストインプレッション、タスクの効率、ユーザの感情に訴える力や全体的な満足度。UIはUXに包括される。
User Experience Design
UXのデザイン作業。アウトプットはワイヤーフレームと詳細な仕様。
User Interface Design
UIのデザイン作業。Webの場合は通常のデザイナーの仕事。アウトプットはモックアップとスタイルガイド。
UX Designer
UXのデザイナー。人間心理学とそのプロダクトを使うユーザ視点の知識がある人。ロールとして、User Reserchar(ユーザーのニーズや行動の調査をする人)、Interaction Desiner(Webサービスやアプリを使う時のアニメーションやフローの設計をする人)、Information Architect(Webサービスやアプリ内のナビゲーションなどで情報の見せ方を設計する人)、Content Strategist(Web
サービスやアプリ内のコンテンツをどう見せるかを設計する人)、Usability Experts(ユーザのフィードバックを受けてユーザの満足度を上げるための改善点を提案する人)、がある。
Human-Centered Design
略語はHCD。まず人のニーズ、能力、行動を定義し、それらを満たすようにデザインする方法。IDEO社が定義した方法。
User Context
そのプロダクトが使われている時の状況や雰囲気。そのWebサービスやアプリはどのように使われているか?どこで使われているか?どのような状況で使われているか?
Double Diamond Model of Design
正しい問題を見つけ、その後に、正しい解決策を見つける、ということに焦点をあわせたデザイン方法。Don Normanが提唱している。
Affordance
そのモノをどのように使うことができるのか。どのアクションが可能か。ユーザにそのアクションができることを示す。
Anti-Affordance
Affordanceの反対語。そのモノがどのような用途で使用できないか。ユーザにそのアクションができないことを示す。
Signifier
そのアクションが行われる場所。例えば、Googleサイトの検索窓は検索というアクションを行う場所。
Mapping
2つのモノの集合間の関係。例えば、部屋に明かりが複数あり、明かりを消すためのボタンが複数あった場合に、どのボンタがどの明かりに対応しているか。
Conceptual Model
概念モデル。何かがどのように動くかを簡素化して説明したもの。技術的なマニュアルでよく見られる。
Mental Model
メンタルモデル。ユーザの頭の中にある物事がどうなるかという考え。同じものを触る時でも人によって異なるメンタルモデルを持っている。
Working Memory
人が注意を向けることができる短い時間。人は4±1つのものの情報を10分から15分程度しか保持できない。これを応用し、Jacob Nielsenの研究では、ヘッドラインは5から6単語が効果的だということが分かっている。
Recognition
認識。人の脳は光の速さで物事を認識しており、頭の中にパターンができている。新しいパターンより類似したパターンを用いた方が脳は早く処理する。つまり、Webサービスやアプリでは、アイコンやサイトの構成などに既存のパターンを用いることが有効であり、車輪の再発明は必要とされていない。
User Expectations
ユーザがWebサービスやアプリを使う時の期待している事。UX Designerはユーザが期待している事と実際に体験する事のギャップを無くすことを目指している。
Impatient
人は待つことができない。Webpage FXによると、83%のユーザが期待しているWebサイトが表示されるまでにかかる待ち時間は3秒である。ローディング時間は1から3秒以内に最適化する必要があり、それ以上かかる場合は待ち時間やパーセンテージをアニメーションで示すなどの工夫が必要になる。
Constraints
制限。そのプロダクトが適切に使われるように意図的に制限を加える。例えば、ツイッターは140文字に制限されている。
Physical and mental limits
人は物理的な制限やメンタル的な制限がある。例えば、Steven HooberとJosh Clarkの調査では、約50%のスマートフォンユーザは片手で持ち、75%のスマートフォンユーザは親指で操作している。
SlipsとMistakes
ユーザのエラーはSlipsとMistakesに分類される。Slipsとは、正しい選択をしたにもかかわらず手順を誤ってしまう事であり、Mistakesとは、目的に合わない選択をしてしまう事である。常識的なチェックやUndo機能などで影響を最小化する必要がある。
Design Pattern
Webサービスやアプリのデザインに関するパターン。
Peripheral Vision
周辺視野。人は中心がよく見えており、横はあまり見えていない。Webサービスやアプリでのメッセージや通知は、ユーザの視野に入っているか?
Decision Paralysis
意思決定の麻痺。人は選択肢が多い場合に決定できない。
Discoverability
ユーザがどのように簡単かつ素早く新しいプロダクトのすべての要素や機能を見つけられるか。どのようなアクションが可能で、どのような状態にあるのか。
Learnability
ユーザはそのプロダクトや機能を使い方をどのくらい簡単に学習できるか。ユーザビリティにおける有効性(Usefullness)に該当する。
Feedback
ユーザがそのプロダクトを使っている時に、何が起きているかをユーザに伝える事。例えば、Webサービスやアプリでボタンを押した場合に更新していることをアニメーションで示したり、ショッピングサイトで購入したものの状態を示したり、など。
Grouping/Chunking
情報を小さいサイズの塊にまとめる事。例えば、設定画面では複数の設定がユーザに分かりやすいようにまとめられている事が多い。
Consistency
一貫性。どのようなデバイス上でも、同じような見た目(色、フォント、テーマなど)を維持し、同じように機能する。スタイルガイドやデザインシステムを活用する。
Anticipatory Design/Data-Driven Design
行動を元にしたユーザデータを利用して、ユーザのために提案や決定を行うデザインのこと。例えば、Amazonでは過去の購入履歴を元に商品を提案してくる。
Stakeholders
そのプロダクトの決定権を持ち、そのプロダクトによって利益を得る人たち。CEOなど。
最後に
いかがでしたか?UXデザインの基本用語は一通り理解できたことと思います。これだけではUXを学ぶ入り口でしかありませんが、より良いサービスを作るためにもUXの知見を深めていくと良いでしょう。では。