
Jupyter Notebookはディープラーニングなどのデータサイエンスのプラグラムを検証する素晴らしいツールです。しかし、実行時にたまに「The kernel appears to have died. It will restart automatically.」というエラーが出ます。今回はその原因と対処法を紹介します。
はじめに
Tensorflowの初歩的なプログラミングとしてDeep MNIST for Expertsというものがあります。Tensorflowでディープラーニングを始める人はまずこのプログラムを書くのが慣例になっていますが、Jupyter Notebookで実行した場合、私のPCでは以下のエラーが出てしまいます。
今回はこの「The kernel appears to have died. It will restart automatically.」というエラーの原因と対処法を紹介します。
原因
エラーの出た環境
エラーは環境に依存します。今回使ったPCのスペックは以下です。
このPC上で、以前紹介した「データサイエンスのためのAnaconda環境構築とTensorflowのインストール方法(Docker編)」を使って、Jupyter Notebookをコンテナとして実行しています。メモリは16Gなので、Dockerはサクサク動いています。
MNISTのソースコード
今回実行したMNISTのソースコードは以下です。
from tensorflow.examples.tutorials.mnist import input_data
mnist = input_data.read_data_sets("MNIST_data", one_hot=True)
import tensorflow as tf
sess = tf.InteractiveSession()
x = tf.placeholder(tf.float32, shape=[None, 784])
y_ = tf.placeholder(tf.float32, shape=[None, 10])
W = tf.Variable(tf.zeros([784,10]))
b = tf.Variable(tf.zeros([10]))
def weight_variable(shape):
initial = tf.truncated_normal(shape, stddev=0.1)
return tf.Variable(initial)
def bias_variable(shape):
initial = tf.constant(0.1, shape=shape)
return tf.Variable(initial)
def conv2d(x, W):
return tf.nn.conv2d(x, W, strides=[1,1,1,1], padding='SAME')
def max_pool_2x2(x):
return tf.nn.max_pool(x, ksize=[1,2,2,1], strides=[1,2,2,1], padding='SAME')
W_conv1 = weight_variable([5,5,1,32])
b_conv1 = bias_variable([32])
x_image = tf.reshape(x, [-1,28,28,1])
h_conv1 = tf.nn.relu(conv2d(x_image, W_conv1) + b_conv1)
h_pool1 = max_pool_2x2(h_conv1)
W_conv2 = weight_variable([5,5,32,64])
b_conv2 = bias_variable([64])
h_conv2 = tf.nn.relu(conv2d(h_pool1, W_conv2) + b_conv2)
h_pool2= max_pool_2x2(h_conv2)
W_fc1 = weight_variable([7*7*64, 1024])
b_fc1 = bias_variable([1024])
h_pool2_flat = tf.reshape(h_pool2, [-1,7*7*64])
h_fc1 = tf.nn.relu(tf.matmul(h_pool2_flat, W_fc1) + b_fc1)
keep_prob = tf.placeholder(tf.float32)
h_fc1_drop = tf.nn.dropout(h_fc1, keep_prob)
W_fc2 = weight_variable([1024, 10])
b_fc2 = bias_variable([10])
y_conv = tf.matmul(h_fc1_drop, W_fc2) + b_fc2
cross_entropy = tf.reduce_mean(tf.nn.softmax_cross_entropy_with_logits_v2(labels=y_, logits=y_conv))
train_step = tf.train.AdamOptimizer(1e-4).minimize(cross_entropy)
correct_prediction = tf.equal(tf.argmax(y_conv,1), tf.argmax(y_,1))
accuracy = tf.reduce_mean(tf.cast(correct_prediction, tf.float32))
sess.run(tf.global_variables_initializer())
for i in range(20000):
batch = mnist.train.next_batch(50)
if i%100 == 0:
train_accuracy = accuracy.eval(feed_dict={x: batch[0], y_: batch[1], keep_prob: 1.0})
print("step %d, training accuracy %g"%(i, train_accuracy))
train_step.run(feed_dict={x: batch[0], y_: batch[1], keep_prob: 0.5})
print("test accuracy %g"%accuracy.eval(feed_dict={x: mnist.test.images, y_:mnist.test.labels, keep_prob: 1.0}))
Tensorflowの公式サイトの内容をTensorflowのバージョン1.8で動くように少し修正しただけのものです。
原因の調査
それでは、原因を調査しましょう。起動しているコンテナのリソース状況を確認するには「docker stats」コマンドを使えば良いので、これで調べてみましょう。
Jupyter Notebookをコンテナとして起動し、別のターミナルで「docker stats」を実行してみます。コンテナはもちろん一つだけしか起動していません。
「MEM USAGE」はそのコンテナが現在使用しているメモリ量、「LIMIT」はそのコンテナが使用できる最大のメモリ量を示しています。このコンテナは約2Gのメモリを使用できることが分かります。
次に、MNISTのプログラムをJupyter Notebook上で実行してみましょう。リソース状況はどうなるでしょうか?
「MEN USAGE」の数字はプログラムの最後の方で急激に上昇し、表示ができなくなってしまいました。そして、Jupyter Notebookの方は今回のエラーを表示して、実行が停止されてしまっています。
結論
これから分かることはメモリのオーバーフローです。コンテナが扱えるメモリの上限2Gを超えてしまったためにJupyter Notebookの処理が止まってしまったのです。
対処法
原因がわかったところで、対処法は以下の2つです。
- Dockerコンテナのメモリを増やす
- Jupyter Notebookを使わずにPythonファイルにして実行する(Jupyter Notebookのオーバーヘッドを回避する)
今回は1つ目の方法で解決してみましょう。
Dockerコンテナのメモリを増やす対処法
原因の結論を読んで疑問に思った人もいたかもしれません。メモリ16GのPCなのにDockerのコンテナのメモリ上限は2Gしかないのはなぜだろうか?
その答えは、実はDockerエンジン上でメモリ制限をしているからです。Dockerの「Preferences -> Advanced」を見てみましょう。デフォルトでは2Gに制限されています。
今回はPCのメモリは16Gあるので、Dockerコンテナで使用できるメモリ上限は16Gまで上げられます。ただ、最大まで上げてしまうと他のアプリケーションが停止してしまう恐れがあるので、今回のプログラムが実行できる上限まで上げることにしましょう。
コンテナの上限を7Gまで上げて、「Apply & Restart」します。
そして、Dockerコンテナのリソースを確認しつつ、MNISTのプログラムをJupyter Notebook上で再度実行してみましょう。
メモリ使用率(MEM %)は約88%まで上昇していますが、使用したメモリは約6Gまでで止まり(上限は7Gなのでそれより小さい)、プログラムは正常に終了しました。
これで今回のエラーは解決できました。
最後に
いかがでしたか?Jupyter NotebookでTensorflowを使う場合にたまに遭遇するエラーなので紹介しました。ディープラーニングを本気でやるならそれなりのスペックのPCが必要になりそうですね。それでは。

