
DevOpsを実現するための最も有名なCI/CDツールはJenkinsです。今回はDocker環境を前提として、JenkinsのセットアップとNodeJSの自動テストを実施する方法を紹介します。
はじめに
継続的インテグレーション(CI)や継続的デプロイ(CD)の価値が一般的に認知され、DevOpsはアプリケーションの開発において必須の考え方となっています。このCI/CDを実現する方法としては、外部のサービスを使う方法と自前で専用のサーバーを用意して専用のツールを導入する方法があります。前者のサービスは、Travis CIやCircle CIなどのサービスが有名で、後者の専用のツールとしてはJenkinsが抜群に有名です。
今回はそんな有名なCI/CDツールであるJenkinsのセットアップからNodeJSの自動テストを実施する方法を紹介します。
前提
以下の準備が完了している必要があります。
- Dockerがインストールされていること
- NodeJSがインストールされていること
- GitHubのアカウントがあること
Jenkinsのセットアップ
まずはJenkinsのセットアップからはじめましょう。
ベースを作る
必要なフォルダとファイルを作成します。
$ mkdir devops_jenkins_nodejs
$ cd devops_jenkins_nodejs/
$ touch Dockerfile
$ touch docker-compose.yml
Dockerファイルを作る
Dockerfile
Jenkinsの公式イメージはJenkinsのバージョンが古いため、最新化するためにDockerfileを作成します。
FROM jenkins
USER root
RUN cd tmp/ \
&& wget https://updates.jenkins-ci.org/latest/jenkins.war \
&& mv ./jenkins.war /usr/share/jenkins/
USER jenkins
docker-compose.yml
Jenkinsに設定した内容を記録できるようにボリュームを以下のように設定します。
version: "3"
services:
jenkins:
build: .
ports:
- 8080:8080
volumes:
- ./jenkins_home:/var/jenkins_home
Jenkinsの起動
Docker Composeを使ってJenkinsを起動します。
$ docker-compose up --build -d
$ docker-compose ps
Name Command State Ports
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
devops_jenkins_nodejs_jenkins_1 /bin/tini -- /usr/local/bi ... Up 50000/tcp, 0.0.0.0:8080->8080/tcp
$ docker-compose logs -f jenkins
...
jenkins_1 | *************************************************************
jenkins_1 | *************************************************************
jenkins_1 | *************************************************************
jenkins_1 |
jenkins_1 | Jenkins initial setup is required. An admin user has been created and a password generated.
jenkins_1 | Please use the following password to proceed to installation:
jenkins_1 |
jenkins_1 | 512ed9cfaf384d3fb7d75ee6c8b354d6
jenkins_1 |
jenkins_1 | This may also be found at: /var/jenkins_home/secrets/initialAdminPassword
jenkins_1 |
jenkins_1 | *************************************************************
jenkins_1 | *************************************************************
jenkins_1 | *************************************************************
...
この時、出力される初期化パスワード(今回は「512ed9cfaf384d3fb7d75ee6c8b354d6」)をメモします。
Jenkinsの初期設定
ブラウザで「localhost:8080」にアクセスします。
以下の画面が表示されるので、先程メモしておいた初期化パスワードを入力して「Continue」をクリックします。
次に推奨設定でプラグインをインストールします。必要なプラグインが自動でインストールされるので、特に理由がなければ推奨設定でよいでしょう。
プラグインのインストールが完了すると以下の画面になるので、管理者ユーザのユーザ名とパスワードを決めて設定し、「Save and Continue」をクリックします。
JenkinsのURLはデフォルトで「http://localhost:8080」なので、必要があれば変更しましょう。今回はそのままで、「Save and Finish」をクリックします。
最後に「Start using Jenkins」をクリックします。
Jenkinsのホーム画面が表示されればOKです。
これでJenkinsのセットアップが完了しました。
サンプルNodeJSアプリケーションの作成
CIの対象となるNodeJSアプリケーションを簡単に作成しましょう。
ベースを作る
必要なフォルダとファイルを作成し、テスト用のパッケージをインストールします。
$ mkdir devops_sample_nodejs
$ cd devops_sample_nodejs/
$ npm init -y
$ mkdir src test
$ touch src/index.js
$ touch src/utils.js
$ touch test/utis.spec.js
$ tree
.
├── package.json
├── src
│ ├── index.js
│ └── utils.js
└── test
└── utis.spec.js
$ npm i -D jest
実装する
それでは簡単な四則演算のアプリケーションを作ります。
index.js
const { math } = require('./utils');
console.log(`Next year is ${math.add(2018, 1)}.`);
console.log(`${math.subtract(2020, 2018)} years until Tokyo Olympic.`);
utils.js
const math = {
add: (x, y) => x + y,
subtract: (x, y) => x - y
};
module.exports = { math };
utils.spec.js
const { math } = require('../src/utils')
describe('utils test', () => {
describe('math test', () => {
test('should be 3 when adding 1 and 2', () => {
expect(math.add(1, 2)).toBe(3);
});
test('should be -1 when subtracting 2 from 1', () => {
expect(math.subtract(1, 2)).toBe(-1);
});
});
});
package.json
{
"name": "devops_sample_nodejs",
"version": "1.0.0",
"description": "",
"main": "index.js",
"scripts": {
"start": "node src/index.js",
"test": "jest"
},
"keywords": [],
"author": "",
"license": "ISC",
"devDependencies": {
"jest": "^23.6.0"
}
}
完成です。
GitHubにPushする
後でJenkinsから利用できるようにGitHubにPushしておきましょう。
お決まりですが、GitHub上で以下のようにリポジトリを作ります。
以下のようにしてPushしましょう。
$ git init
$ touch .gitignore
$ echo node_modules/ > .gitignore
$ git add .
$ git commit -m "initial commit"
$ git remote add origin https://github.com/{your-github-account}/devops_sample_nodejs.git
$ git push -u origin master
「{your-github-account}」は自分のGitHubアカウントに置き換えてください。
これでサンプルのNodeJSアプリケーションが完成しました。
Job DSLによる新しいジョブの追加
それではJenkinsに戻りましょう。
Job DSLとは?
ここで簡単にJob DSLを説明しておきます。Job DSLとはJenkinsの新しいジョブの設定をDSL(Domain Specific Language)で書いておき、それを読み込むだけでGUIを使わずに新しいジョブを作成する仕組みです。今はInfrastructure as code(IaC)と言われているように、インフラであっても人が手動で設定するのではなく、設定をソースコードにして自動的に設定されるべきです。そのためにJob DSLは有効な手段です。
GitHubのコミットを検知する方法
今回はGitHubのソースコードがコミットされたらそれを検知する設定をします。その設定方法は以下の2種類があります。
- Pull型: GitHubリポジトリにJenkinsから数分単位でポーリングして、新しいコミットがあればビルドを実行する
- Push型: GitHubリポジトリにJenkinsへのWebhookを設定しておき、新しいコミットが発生したタイミングでJenkinsに通知してビルドを実行する
Pull型の方が昔からあるのでメジャーな方法ですが、基本的にはどちらでも問題無いでしょう。どちらかと言うと、Jenkinsを配置するネットワーク環境に応じてどちらを使うかが変わります。例えば、プライベートネットワーク上にJenkinsを構築してVPNでJenkinsを使用している場合、Webhookは使用できないのでPull型の方法を選択することになります。一方で、AWSなどのパブリッククラウド上でVPC内にJenkinsを構築している場合は、ファイアーウォール(Security Group)からGitHubを許可すればWebhookが使えるので、Push型の方法を採用できます。
今回はPull型の方法で進めていきます。
NodeJSプラグインを入れる
JenkinsからNodeJSを実行するためにNodeJSプラグインをインストールしましょう。
ホーム画面から「Jenkinsの管理」をクリックします。
「プラグインの管理」をクリックします。
「NodeJS」を選択して、「ダウンロードして再起動後にインストール」をクリックします。
「インストール完了後、ジョブがなければJenkinsを再起動する」をクリックします。
Jenkinsが再起動したら完了です。
NodeJSをJenkinsにインストールする
NodeJSをインストールしましょう。
「Jenkinsの管理」から「Global Tool Configuration」をクリックします。
「NodeJS追加」をクリックし、任意の名前(今回は「nodejs_v11」)をつけて、「自動インストール」にチェックを入れいます。「Save」をクリックします。
これでJenkinsにNodeJSがインストールされました。
Job DSLプラグインを入れる
JenkinsでJob DSLを使用するにはJob DSLプラグインが必要です。
NodeJSプラグインを入れた時と同じように、「Jenkinsの管理」から「プラグインの管理」でインストールできます。
Jenkinsが再起動されれば完了です。
Job DSLを作成する
それでは新しいジョブ用のDSLファイルを作成します。
$ pwd
/Users/you/devops_sample_nodejs
$ touch nodejs.groovy
nodejs.groovy
DSLは以下のようにします。
job('NodeJS Job') {
scm {
git('https://github.com/{your-github-account}/devops_sample_nodejs.git') { node ->
node / gitConfigName('DSL User')
node / gitConfigEmail('jenkins-dsl@example.com')
}
}
triggers {
scm('H/5 * * * *')
}
wrappers {
nodejs('nodejs_v11')
}
steps {
shell("npm install")
shell("npm test")
}
}
「{your-github-account}」は自分のGitHubアカウントに置き換えてください。
DSLの内容は、対象Gitリポジトリの指定、5分毎のポーリング設定、NPMのテスト実行、です。
このDSLをGitHubにPushしておきます。
$ git add .
$ git commit -m 'Add DSL'
$ git push origin master
これでJob DSLの作成は完了です。
Job DSLから新しいジョブの作成
Job DSLをGitHubから読み込んで新しいジョブを作成しましょう。
Jenkinsのホーム画面から、「新しいジョブ」をクリックします。
任意のジョブ名(今回は「seed_project」)を入力し、「フリースタイル・プロジェクトのビルド」を選択し、「OK」をクリックします。
「ソースコード管理」で「Git」を選択し、「リポジトリURL」(今回は「https://github.com/{your-github-account}/devops_sample_nodejs.git」)を入力します。
「ビルド」から「Process Job DSLs」をクリックします。
「Look on Filesystem」を選択し、「DSL Scripts」にDSLファイルのパスを入力します。「保存」をクリックして完了です。
このDSLを実行するには承認プロセスが必要です。「Jenkinsの管理」から「In-process Script Approval」をクリックします。
対象のDSLのところに表示されている「Approved」をクリックしてDSLファイルを承認します。
「seed_project」に戻り、「ビルド実行」をクリックします。
以下のようにSUCCESSになればビルドが完了です。
ホーム画面に戻ると、以下のように新しいジョブが作成されています。
新しいジョブの中身を見てみましょう。「設定」をクリックします。
「ソースコード管理」に正しくGitHubリポジトリが設定されています。
「ビルド・トリガ」に「SCMポーリング」の設定が5分単位でポーリングするように設定されています。ちなみに、この設定はcronと同じ記述方法です。
「ビルド環境」にNodeJSプラグインでインストールしたNodeJSバージョン11の環境が指定されています。
「ビルド」に自動テストのためのシェルスクリプトが設定されています。
DSLの内容が正しく設定されていることが確認できました。
これで新しいジョブの追加が完了しました。
CIの動作確認
最後にCIの動作確認をしていきましょう。
ジョブの実行による自動テスト
それでは「ビルド実行」をクリックしてビルドを開始します。
テストが正しく実行されています。
OKですね。
GitHubへコミットをトリガーとして自動ビルド
それでは、ソースコードを変更してコミットしてみましょう。
utils.jsには足し算と引き算の関数だけがありましたが、掛け算と割り算を追加しましょう。
index.js
const { math } = require('./utils');
console.log(`Next year is ${math.add(2018, 1)}.`);
console.log(`${math.subtract(2020, 2018)} years until Tokyo Olympic.`);
console.log(`The tax of 100 yen is ${math.multiply(100, 0.1)} yen if the tax rate is 10%.`);
console.log(`I baked 10 cookies. There're 5 people here so you can eat ${math.divide(10, 5)}.`);
utils.js
const math = {
add: (x, y) => x + y,
subtract: (x, y) => x - y,
multiply: (x, y) => x * y,
divide: (x, y) => x / y
};
module.exports = { math };
utils.spec.js
const { math } = require('../src/utils')
describe('utils test', () => {
describe('math test', () => {
test('should be 3 when adding 1 and 2', () => {
expect(math.add(1, 2)).toBe(3);
});
test('should be -1 when subtracting 2 from 1', () => {
expect(math.subtract(1, 2)).toBe(-1);
});
test('should be 12 when multipying 3 by 4', () => {
expect(math.multiply(3, 4)).toBe(12);
});
test('should be 4 when dividing 8 by 4', () => {
expect(math.divide(8, 2)).toBe(4);
});
});
});
これをコミットします。
$ git add .
$ git commit -m 'Add multiply and divide functions'
$ git push origin master
しばらくすると(5分以内)、以下のようにJenkinsがコミットを検知して自動的にビルドが開始されます。
テストが正しく実行されています。
これで全て完了です。
最後に
いかがでしたか?これでJenkinsを爆速でマスターできたのではないでしょうか。CI/CDを実施して、継続的に品質の高いアプリケーションを生み出していきましょう。それでは。
環境
- Docker: 18.06.1-ce, build e68fc7a
- NodeJS: v11.0.0
- Jenkins: 2.151


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